滋賀大学と滋賀県立大学との連携した地域づくりに向けてー株式会社イヴケアー
「大学連携信用保証料割引制度」第1号利用者に聞く
髪の毛を使ったストレス診断で新たに駅前ケアルームを開設
株式会社イヴケア/代表取締役 五十棲 計 氏
長期的・客観的にストレスを可視化
滋賀大学で初めてのベンチャー企業「株式会社イヴケア」は、目に見えないストレスを髪の毛を用いて数値化し測定するというサービスを柱として2019年に創業しました。これまでも血液や唾液、アンケートなどによってストレス診断は行われてきましたが、いずれの結果も短期的・主観的なものに限定されてしまいます。そこで着目したのが、毛髪に蓄積するコルチゾールというホルモンがストレスの強度によって変化する点です。
髪の毛は根本から毛先に向かうほど古く、位置ごとにホルモン量を測定することで長期にわたるストレスの変化を客観性のある数値として得ることができます。あわせてDHEAというホルモンを測れば、ストレスにどれだけ耐えたかという反応を分析でき、「二つのバランスによって、受けたストレスと、それにどれぐらい立ち向かえているかを知ることもできます」と同社の代表取締役社長CEOの五十棲計さんは説明します。
診断からメンタルヘルスマネジメントへ
会社設立は五十棲さんが大学院1回生のときのことで、それまでは教育学部でいじめについて研究していました。いじめの実態を把握しケアを考えるうえで難しいのは、自分が悪いからいじめられる、というように被害者の認知がずれる点にあります。そこで五十棲さんは被害者が受けるストレスを客観的なデータとしてとらえる必要性を感じ、研究室の大平雅子教授が開発した毛髪診断技術をもとに研究を進めていました。そんななか、県内の理系研究者・技術者を育成する創業支援プログラム「滋賀テックプランター」を知り、課題解決型のメンタルヘルスビジネスに取り組むことにしたといいます。
創業当初は企業を対象に商品・サービス開発のエビデンスとなるデータの提供や社員診断などを展開していましたが、診断結果をもとにしたカウンセリングや、ストレスとうまくつきあうためのメンタルヘルスマネジメントなどを担うようになり、現在では産業医や臨床心理士、社会福祉労務士とチームを組んで診断技術の提供に留まらない事業を展開しています。
これまでは滋賀大学内にオフィスを構えていましたが、一般にも広くサービスを活用してもらえるよう、この春、JR膳所駅前の交通至便な場所に移転し、従来事業に加えて「心のケアルームpointぽわん(ぽわんぽわん)」を開設しました。「私の研究テーマでもあるいじめ問題も含め、地域に根ざしながら幅広い年齢のみなさんが気軽に訪れることができるサロンになれば」と展望を語ってくれました。
信用保証が学生起業家のより自由な発想を支援
本社移転とケアルーム開設にあたり、活用したのが大学連携信用保証料割引制度です。五十棲さんはこの制度について「経営者保証を必要とせずに融資を受けられる点、さらに保証料をサポートしてもらえるのが有難かった」と振り返ります。学生起業家は資産がないケースがほとんどで、資金集めは大きなハードルです。五十棲さんは自身でも創業時からストレス診断を継続的に行ってきましたが「第1回目の融資のタイミングが不調のピークだった」と苦笑いします。
「学生が創業する際は共同出資を募ることも多く、若年であるために立場が弱くなったり、各々の思惑に振り回されたりして意思決定が迷走するケースもよく耳にします。自己資金で展開できればそれに越したことはありません。融資が受けやすくなり、保証の受け皿があれば、思い切った判断やスピーディーな展開も可能になるはず」と実感を込めて語ってくれました。
2025年の大阪・関西万博では大阪ヘルスケアパビリオンの出典候補者にも選出され、さらに大きな一歩を踏み出そうとする五十棲さん。今後は企業向け、個人向けの事業を両輪に、子どもから大人まで、また、ペットやペットを通じた飼い主のメンタルヘルスも視野に入れ、「Well-being」な社会の実現に貢献することをめざしていきます。
企業データ
本社///滋賀県大津市馬場2-10-16ZEZE駅前キューズビル 3F-BC
創業///平成31年1月(2019年)
事業内容/メンタルヘルスコンサルティング
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