部屋食やペット対応客室で顧客に寄り添う
充実のおもてなしで、何度も訪れたくなる宿へ

暖灯館 きくのや/代表取締役 池見 喜博 氏

歴史ある温泉地のイメージ回復に努めた若手時代

おごと温泉の歴史は古く1200年前まで遡り、比叡山延暦寺の開祖である伝教大師最澄が開いたといわれています。大正12年に江若鉄道が雄琴駅まで開通して利便性が高まると、温泉開発が本格的に始まり、一帯に温泉旅館が立ち並ぶようになりました。戦後は進駐軍に接収されていた時期がありましたが、その後の復興期に創業したのが暖灯館きくのやでした。

「昭和28年の開業当初は菊の家という名で、現在地から国道を挟んだ山側にありました。今年でちょうど70周年になります」と三代目の池見喜博社長。当時は琵琶湖で獲れる鴨料理を目当てに訪れる湯治客や宴席が中心で、高度経済成長とともに大きな規模の旅館やホテルが増えていきました。喜博社長の父・喜八郎氏は市議会議員等の公職を歴任し地域振興にも力を入れてきた人物で、家業についても昭和40年に会社組織とし、旅館名を雄琴国際ホテルきくのやとして琵琶湖岸側へ新築移転しています。

その後、まちが大阪万博の特需に湧いたころから近隣に風俗店が多数出店するようになります。風俗街のイメージが先行し、温泉旅館から女性や家族連れの足が遠のくなか、改革に乗り出したのが当時の若手後継者たち。大学卒業後、平成7年に家業に入ったばかりだった喜博社長もその取り組みに参加し、地元振興に携わることになっていきました。

団体から個人客へ。ペットも泊まれる宿として

まず地元温泉組合の理事が若手に刷新。喜博社長は「まちに新しい息吹を吹き込もうという古参組合員のみなさんの思い切った決断でした」と振り返ります。若手たちは先輩の思いに応えようと平成10年に勉強会「雄琴青経塾」を立ち上げ、ここから生まれた有志の活動が発展して、温泉地としては日本初の地域ブランド(地域団体商標)の認定を受けます。これを契機にJR雄琴駅は「おごと温泉」駅に改称され、各ホテル・旅館も個性を打ち出すべく設備投資を活性化させていきました。

そんななか同館が事業の方向性として掲げたのは、団体から個人客へのシフトチェンジでした。周囲には客室数50以上のホテルが多い一方で、同館は35室と規模が小さく、ひと組ごとの手厚いサービスに活路を見出します。バブル崩壊以降、団体客が減少していることも受け、平成16年にデザイナーを入れて全館リニューアルを敢行。客室数を7室減らして湖側に広めの部屋を作り、「我が家のようなぬくもりあるおもてなし」を前面に打ち出しました。思いを表すように、名前を暖灯館きくのやと改めたのもこのときでした。

 

これと前後して始めたのが、現在同館の大きな特色の一つになっているペット連れの宿泊です。当初は喜博社長の母である大女将が、愛犬家の馴染み客に頼まれたことをきっかけに、瞬く間に口コミが広がっていったといいます。

業界に先駆けたペットと泊まれる専用客室

当時、ペットと一緒に泊まれる宿といえば、ペンションや貸別荘がほとんど。温泉旅館ではほぼ例がないこともあって順調に予約数を伸ばしていきましたが、あるとき苦い経験をすることになります。旅館にペットを入れることはまだまだタブー視されていたこともあり、一般顧客への配慮も含めて閑散期や旧式の部屋へ案内していたところ、「お金を出し惜しんでいるわけでもないのに、なぜこんな待遇を受けるのか」と叱責を受けたのです。タブーを受け入れているという慢心が招いたお客様の声だったと喜博社長は自戒を込めて振り返ります。

しかし、この出来事は同館の大きな転機となりました。ペット連れの宿泊客に対してサービスと施設の整備を徹底して追及し、平成18年にはペット専用の客室を設置しました。その後はニーズにあわせて改装を行い、現在では全16室中8室まで増やし、露天風呂付客室も設けています。

また、ペット連れと一般のどちらの顧客も快適に過ごせるよう、ペットは8kg以下の犬のみで、ロビーなど共用空間はキャリーケースか抱っこでの移動というルールも設けました。「お客様第一ではありますが、何もかもをOKにしないことで、トラブル回避やわんちゃんの安全確保につながり、ひいてはそれがお客様の快適に通じると考えています」。業界のパイオニアであるがゆえに設備やルール作りも手探りでしたが、そこから生まれた独自のノウハウが同社の強みとなっています。

一人ひとりの「考える接客」で変わり続ける

コロナ禍で旅行業界が大きな打撃を受け、同館も緊急事態宣言下では1カ月の休業を余儀なくされました。しかし、これまで充実させてきた「ひと組ごとのおもてなし」「ゆったりくつろげる部屋食」「露
天風呂付客室」というサービスが感染防止策の一端を担うこととなり、大幅な減収を回避することができたといいます。従来は宴会場でのハーフバイキング形式だった朝食についても、スタッフの提案で弁当形式による部屋食を導入。感染予防策の補助金を使い新サービスにあわせた食器類も購入できました。

一般顧客は4割、ペット連れは7割がリピーターで、なかには20年で50回以上利用した人もあるという同館。顧客ごとの好みや記念日などを細かく把握し、丁寧なサービスを積み上げていくことを信条としてきただけに、「父は私に人が財産だと繰り返し言って聞かせたのだと思います」と喜博社長。自身も
「ニ ー ズにあ わ せて変わっていくことが当たり前」であるという企業風土を大切に育ててきました。

地域とのつながりも重視し、地産地消やSDGsに取り組むほか、まちの観光振興の一助になればと同館向いの敷地に一般開放も視野に入れたドッグランの建設も計画中とか。コロナ禍が下火になりつつあり、観光事業の復活が期待されるなか、この春には犬用温泉風呂を設けた客室も3室整備し、新たな取り組みが着々と進んでいます。

お客様のニーズをとらえ喜んでいただけるおもてなしを

以前は年間100日以上を営業活動にあて、修学旅行など団体旅行客を呼び込むべく、全国の旅行会社をまわっていましたが、旅行専門サイトやWEB予約が充実するなかで、私どものような「愛犬と泊まれる宿」「お部屋食」といった尖った企画を打ち出す宿泊施設が目に留まりやすくなりました。団体の場合は部屋の均一性が重視されますが、個人のお客様に満足いただけるよう各部屋に工夫を凝らすようになり、旅行サイトの年間賞をいただくなど、いまではリピートしてくださるお客様が増えました。

お見送りの際も必ず「またお越しください」とお声がけしております。また、事業が継続していくため
には琵琶湖を含む地域の環境が持続していくことも大切で、地産地消やアメニティのプラごみ軽減などSDGsにも努めています。

企業データ

本社//大津市雄琴6-1-29
創業//昭和28年(1953年)
従業員/26名
業内容/旅館業
HP/公式HPはこちら>>

企業ポリシー

●ほっとする我が家のようなおもてなしを、細部に亘り一つひとつかたちにする。
●愛犬と一緒に泊まれる部屋など、お客様に寄り添った工夫を常に追求する。
●個々の人材を活かし、「また来たい」と喜ばれる接客・サービスに努める。

>>「湖国で輝く企業を訪ねて」PDF版はこちら(PDF形式:2MB)

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