湖国で輝く企業を訪ねて                      ー株式会社信英技研工業 ー

変種変量に特化し大手メーカーのパートナーに
板金加工の枠を超え、複合的なものづくりへ

株式会社信英技研工業/代表取締役 田口 勇介 氏

オーダーメイドの精密板金加工

   消費者ニーズの多様化やプロダクトライフサイクルの短期化により、いま部品加工の現場では「変種変量生産」が求められることが増えています。そんななか、金属加工のなかでもとくに精密板金に特化し、少量から大量生産まで変動する品目に柔軟に対応する生産体制づくりにいち早く取り組んできたのが、栗東市に本社を構える株式会社信英技研工業です。

 計測装置や建機、輸送機、プラント設備分野の筐体(機械の外装・フレーム)や剛性パーツをはじめとする多様な産業製品を取り扱い、「レーザー加工から塗装工程まで、一貫した生産工程を保有しているのが弊社の大きな特徴です」と田口勇介社長。現会長で父の信雄氏により1987年に京都府久世で創業し、6年後にはレーザー複合機を導入することで精密板金の加工に参入。以降、数量1個からのオーダーメイドや試作・データ検証などに力を入れ、ほかに先駆けて変種変量の生産体制を整えてきました。

 35周年を迎えた今年5月、勇介社長へと事業承継が行われましたが、「10年前は父の事業を継ぐとは考えてもみなかった」とか。22歳のとき、もともとものづくりが好きなこともあり計器メーカーに入社し、製造現場から顧客対応、開発・設計と多岐にわたって携わってきました。やりがいを感じ、骨を埋めるつもりで仕事に取り組んでいたなか、入社12年目に企業の体制が変わったことをきっかけに転職を考えるようになり、「そんなとき、父から今後の事業承継を考えるうえで、継ぐつもりはあるか? ないのであれば体制を整えるので回答が欲しいと言われたんです」。1年間悩んだ末、2016年に同社へ入社して一から事業について学び、約7年を経て40歳で社長就任の運びとなりました。継承について自ら選択と決断をさせてもらえたことは、その後の支えになったといいます。

社内改革とともに進めた事業承継

 前職と父の会社は同じものづくりの企業であり規模も同程度ですが、入社してみるとその働き方の違いにショックを受けたという勇介社長。前職は大手メーカーの子会社ということもあり、労務管理やコンプライアンス等も親会社に準じていましたが、転職してみると若手社員の大半は日付が変わるまで毎日残業し、社員50人の企業で毎年5人前後が辞めていくという状況でした。人手不足が叫ばれるなか、「このままでは会社が立ち行かなくなる」と、働き方改革に着手。休日を増やして、有休取得を推奨し、労務管理も徹底することにより2020年からは離職者ゼロにまで成果があがってきたといいます。

 また「父は現場からの叩き上げで、良くも悪くも根っからの親方気質」と評するように、すべての取り決めがトップダウンなのも課題だと感じました。社員の間には社長の指示を待って仕事に当たることが慣習化しており、自身に向けて指示を仰ぐ言葉に対し「あなたはどう思う?」「どうしたい?」と返すことから地道に改革を始めていきました。「変革に不満はつきもので、父や上層部とも何度もぶつかり、投げ出したくなることもありました。ただ、その人たちのこれまでの苦労を聞いており、無駄にはできないという思いもあったんです」。

 2008年のリーマンショック時には、売上が激減するなかでも父が必死で社員の給料を工面したこと、また、営業部長が板金の材料を扱う鋼材屋の納車トラックを追跡して新規開拓先を探したことなど、多くの苦労があり、事業をつないでくれた努力に報いたいという思いが改革の力になったといいます。

 円滑に事業承継していくことを視野に、相談のうえ父の出勤日を毎年順次減らしていき、それとともにトップダウンだった体制も徐々に改善されていきました。「なんでも自分でやってみたい私と、有難いことに思い切って任せる覚悟をしてくれた父。それがうまくかみ合ったことで会社は少しずつ変わりました」と話します。「良いところも悪いところも余さず受け取ってこそ事業承継」という考えのもと、一つひとつの課題に向き合い、低迷傾向にあった業績も右肩上がりへと好転しています。

社員の満足度向上を顧客満足へつなげて

 業績向上のために勇介社長が力を入れたのは、受注の「選択と集中」です。リーマンショック時の苦境の影響からか、基本的に仕事を断ることはなかったという先代社長ですが、内容を詳細に見直せば、利益があがらない試作やあとにつながらない単発の仕事も多く、顧客のニーズと自社の技術の特徴がマッチングしていない仕事も散見していたといいます。それらを取捨選択していくことに対しては社内の大きな反発もありましたが、いざ決断してみると利益率の向上だけでなく、働き方の改善にもつながり、社員の納得に結びついていきました。

 変種変量のものづくりは生産管理が難しいといわれるなか、自社で管理ソフトを開発し、受注から品質、経理、労務までを一元管理してきました。それに加え、経営・経理面に関しても役職者と情報を共有する仕組みをつくり、また若手による品質委員会や社内開発グループも結成。月1回、全社員に向けて成果と目標を共有する場を設けることもスタートさせました。製造のオートメーション化が進むなかで、設備導入についてもトップダウンではなく検討段階から社員を巻き込み、デモやメーカー見学などを経て要不要を厳しく見極めることも進めています。  

 今後は、現在の一貫生産体制のなかで、さらに組み立て部門を充実させ、アッセンブリ(流通加工)など複合的なものづくりで顧客のパートナーをめざすことを課題に据えています。またそのための工場の改修、新工場の建設にも着手しています。

 「入社したときは工場は老朽化が進んで屋内は暗く、ヘッドライトを付けて手元を照らしているという驚くような環境でした。少しずつ改善を進め、新工場では冷暖房などにもさらに配慮して働きやすさを考えています」と勇介社長。社員の満足度向上に務めることで顧客満足を高め、それが売上につながればまた働き方が変わる。そんな好循環が生まれ始めています。

 

企業データ

本社//滋賀県栗東市辻115-4
創業//昭和62年(1987年)
従業員/51名
事業内容/精密金属加工および製缶・塗装一般・技術開発
HP/公式HPはこちら>>

企業ポリシー

●専門性の高い技術力と安定した生産力で顧客のニーズに全力で応える。
●一貫生産体制を整え、品質、コスト、納期などを徹底管理する。
●従業員が「よりよい会社を作る」を合言葉に日々、改善・改革に取り組む。

>>「湖国で輝く企業を訪ねて」PDF版はこちら(PDF形式:2MB)

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