湖国で輝く企業を訪ねて                      ー株式会社池田製作所ー

精密樹脂加工メーカーが自らの経験を生かして商品化

町工場をまるごと管理する生産管理システム

株式会社池田製作所/代表取締役 池田 龍宏 氏

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小規模事業者のDX化をサポート

代表取締役 写真

 生産工場などモノづくりの現場でDX化が推し進められている昨今、家族経営など小規模な工場では費用や実務の面を考慮するとすぐに取り組むことは難しく、時代に取り残されることを懸念する経営者の声も聞かれます。そんななか、日野町にある社員11人の精密樹脂加工工場が自らと同じような“町工場”に特化した生産管理システムを開発し、販売をスタートさせたことが話題になっています。

 「自分たちが必要に迫られ、何年もかけて構築してきたものをベースにしています。生産現場が必要とするものだけに絞り、工場内で働く人が使いやすいように考えました」と株式会社池田製作所の代表取締役・池田龍宏氏は説明します。

 このシステムは“マチ工場を丸ごとカン理”する生産管理システムを意味する「マチカン」と名づけられ、小規模な町工場が抱える課題に焦点を当てた独自のアプローチが取られています。とくにバーコード読み取り機能は手袋を外さずに操作でき、作業中のデータ入力がスムーズです。オンプレミス型で既存のネットワークとの統合が容易であり、セキュリティ面も考慮されています。これにより町工場は自身のネットワーク構成を変更することなくシステムを導入し、機密性を保ったまま業務を遂行できます。

 また、町工場ならではの現場の実態が十分に考慮され、生産プロセスが効率的に進化しました。これまでの運用事例では受注業務にかかる時間(約143時間/月)を自動化(VBA)でき、その効果は金額換算すると10年間で約1,660万円以上に達すると試算されています。このような独自性と現場への柔軟な対応が「マチカン」の大きな特性であり、「町工場の悩みを魔法使いのように解決し、町工場の未来を切り拓く存在になってくれるはず」と龍宏氏。小規模事業者が限られたリソースでDXに取り組む上での大きな強みとなります。

挑戦と技術革新を繰り返してきた成長のあゆみ

製品画像

 1971年、龍宏氏の父である幸太郎氏が個人事業主として創業。当初は池田鉄工所としてボルトやナットなどの金属加工を中心に行っており、「全国に点在する家族経営の町工場の典型でした」といいます。1980年代には“日の丸半導体”の隆盛を背景に幸太郎氏は大手半導体洗浄装置メーカーの協力企業となり、精密樹脂切削加工に特化した事業へと移行しました。この時期、社名も池田製作所に変更されました。

 2000年ごろには手作業による組み立てや溶接が主流で、処理槽や薬液タンクなどの樹脂溶接加工品が収益の柱でしたが、利益は限られ、技術の属人性が強まっていることも課題となっていました。そこで2005年、工場長を務めていた龍宏氏は事業拡大の一環としてCNC工作機械を導入。業績を伸ばしましたが、リーマンショックにより仕事と売り上げが急減し、一時は35人いた従業員は家族を含む5人にまで縮小。景気回復後は以前の収益柱は既に存在せず、少人数のため不適合品や納期遅れが悩みでした。「安い単価の仕事を数多くこなすしか打つ手はなく、毎日寝る間なく残業しても何も残りませんでした。未来を指す光も見つけ出せず、当然利益を出すこともできず慢性的に資金難でした」と当時を振り返ります。

 少しずつ少人数でもこなせる仕事が増加し、高精度な製品の加工にも積極的に取り組むようになるなか、作業の効率化を模索し、技術の属人化や品質のバラつきを改善することに着手します。作業をデータ化し、ノウハウをCNC工作機械や生産管理システムに蓄積。独自のナレッジベースを構築できたことにより、誰もが同じ品質の製品を安定して製造できる機械加工を目指すことができました。業務改善出来たこともあり、2020年には満を持して法人になることもできました。

モチベーションを高め、変化を楽しむ経営を

 機械加工と生産管理システムを積極的に導入した現在、残業がほぼなくなり、町工場では珍しくテレワークも実施されています。情報共有がマチカンを通じて徹底され、未経験者でも1年で工作機械の操作とプログラミングができるようになるまで、教育にも力を入れています。

 人材の育成においては、個性の尊重が大切だと語る龍宏氏。それぞれの資質を見抜くためにコンサルタントを招き、商品開発のワークショップなども実施しています。その結果、自社商品が生まれ、ECサイトで販売し利益を上げることまで実現しました。「それぞれが“やりたいこと”“面白いこと”を見つけるのが会社も人もステップアップへの道」と話し、誰もが自分の仕事を積極的に工夫・改善できるよう、提案手当や採用手当も導入しています。

 また、働く環境を楽しくするために工場全体を改修。白と黒で統一された最新のカーディーラーのような作業場にはプロダクトデザインされた工作機械が並んでいます。自社研究室「イケダラボ」や本当に工場かと目を疑うようなカフェテリア、オシャレなテーブルに置き菓子があるなど、快適性を高める工夫が施され、工場内にはメイクコーナーや女子トイレも整備。男性中心だった環境に女性も快適に働ける空間が広がっています。さらに、製造プロセスで発生する廃棄物を最小限に抑えるため、リサイクルや再利用を積極的に行っています。SDGs宣言のもと、環境への取り組みを通じて、地域の環境保全にも貢献しています。

 マチカンの開発・販売や工場のショールーム化、働き方への取り組み、社会貢献など、「町工場にできること」をキーワードにSNS等で発信を続け、人材確保だけでなく「お客様に対しても、私たちの仕事に向き合う姿勢を感じていただけるはず」と波及効果が期待されています。今後の期待が高まるなかで「変化を楽しむ経営をしていきたい」との言葉が響きます。

企業データ

会社看板

本社//滋賀県蒲生郡日野町大字別所900

創業//昭和46年(1971年)

従業員/11名

事業内容/精密樹脂加工、生産管理システム開発・販売

HP/公式HPはこちら>>

企業ポリシー

●精密樹脂加工に特化し、顧客の悩みに応える高付加価値製品を提供する。
●「追求と経験は宝になる」を理念にワクワクするようなモノづくりをめざす。
●ナレッジベースの活用で社外へ向けた真心のサービスを提供する。

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